私は、ほとんどと言ってもいいぐらいコミックの類いは読みません。
ただ、この「人間交差点」だけは読んでしまうのです。
一話完結だからというのもありますが、
やはり、原作・脚本の矢島 正雄さんの洞察力・表現力。
ひと目で弘兼 憲史さんの画(え)とわかる独特のタッチ。
この二つの絶妙な組み合わせが、読者をひき付けてやまないのです。
一度読んだ人は、わかりますが、よくあれだけの空間に「起・承・転・結」が、創れるのか?不思議でなりません。
一話ごとに、主人公もストーリーも違います。だから、余計に難しいのです。
連載で、ひとりの主人公にスポットをあて、様々なストーリー展開を重ねていったほうが楽なのかもしれませんが、
あえて、自分を追い詰めながら、余分なものをいっさい削ぎ落として完成させた作品なので、
読者をひき付けてゆくのです。
悲しく、虚しいストーリーが多いですが、なぜか余韻をひくものばかりです。
おそらく、「同じ心の傷や痛み」、「人間のもつ罪深さ」に共感するのでは?
ひとが背負っている「こころの醜さ」「つぐないきれない過去」・・・・・
それらは忘れ去りたいけど、決して、水に流してはいけない・・・・・。
そんな、本当の生き様を描いているからこそ、こころがひき付けられるに違いありません。
全232話 単行本(ビッグコミックス)は全27巻、文庫版は全19巻
私は「扉」が好きです。単行本なら第12巻、文庫本なら第9巻に収録されてます。
「扉」からの引用が一番好きで、頭から離れません「扉」・・・・・。
「生きるちゅうのは引きずることです。ズルズルズルズル引きずっていくことですよ。
ズルズルズルズル音たててみっともないとですよ。」・・・・・・・・・・