私が「冬に読みたい本」と聞いて思い浮かべるのは、新田次郎さんの「アラスカ物語」です。
確か 高校生の頃に初めて読んだ記憶がある、とても印象に残る小説です。
寒い時に読みましたので、アラスカの大自然の寒さがひしひしと伝わる小説でした。
この小説は、フランク安田(本名 安田恭輔)さんの実話を元にしたノンフィクションに近いものです。
山岳小説で有名な新田次郎さんが書き上げた 壮大な「アラスカ」を舞台にしたストーリーです。
明治時代、ひとりで日本を離れたフランク安田はアラスカでエスキモーの女性と結婚します。
そしてエスキモーの村人となり共同生活を始めます。
極寒の地、雪と氷と吹雪の白く暗くモノトーンの世界・・・
ただでさえ厳しい自然環境に加えて、村人たちとの生活習慣・風習・文化の違いに戸惑う主人公。
そんな主人公の前に様々な苦難や試練が立ちはだかります。
捕鯨を糧にしているエスキモーの村人にとって、白人たちの乱獲は脅威をもたらし飢餓を招きます。
それに加え疫病がエスキモー村を襲い、村は大きな存続という問題の壁にぶつかります。
主人公は、それを乗り越えるために新天地を探す冒険の旅に出るのです。
新田次郎さんは、この事実を知って興味が湧いたのでしょうね。
そしていろいろと資料を集めたり取材をしながら執筆したのでしょう。
新田次郎さんが「フランク安田さんの軌跡」を追いながら書き上げた この小説は私達読者も同じ様な体験に駆り立てます。
私も「フランク安田さん」本人に興味が湧きましたので調べてみました。
フランク安田 - Wikipedia
フランク安田または安田恭輔(Frank Yasuda、1868年 - 1958年1月12日)は、アメリカ合衆国アラスカ州で「ジャパニーズモーゼ」と呼ばれている日本人。
1868年宮城県石巻市に生まれて、22歳の時にアメリカに渡った。アメリカ沿岸警備船「ベアー号」の雑用係になった。アラスカで寒波に巻き込まれて身動きができなくなる。
救助を求めてイヌイットのバロー村にたどり着いた。それ以来、その村で暮らすことになる。麻疹の流行で多くのイヌイットの村人が死んで、鯨の不漁で食料危機に苦しんだ。
2年の歳月をかけて、バロー村から南へ600キロの土地を見つけた。その後、安田がリーダーとなり、3年を費やして200人余りのイヌイットをその土地に連れて行き、ビーバー村を作った。
交易所、学校、教会、郵便局、船着場を設置した。1930年代の大恐慌でも村の経済は盤石だった。1942年から終戦の1945年までは日系人捕虜強制収容に収容されたが、戦後もビーバー村に落ち着いた。
もう二度と日本に戻らないまま1958年1月12日に死んだ。
1989年5月8日に功績が認められアラスカ州より表彰を受ける。
アラスカにあるブルックス山脈の山の一つに「ヤスダマウンテン」と名付けられた。
すごいですね!言葉になりません・・・
氷点下の極寒の異国に単身で出掛け、まったく文化・生活環境が違う村で、これだけの偉業をなしたのですから。
この事実を元に 新田次郎さんが自然な脚色・独特な脚色をしながら書き上げた「アラスカ物語」は、とても興味深いものでした。
ラストまで一気に読んだのを今でも覚えています。
寒い時に「常夏の物語」でも読んでホットな気分になるのもいいでしょうが、
こたつに入りながら この「アラスカ物語」を読んで「心をホット」にするのもいいのではないでしょうか。