人間は何も学ばない

「雨が降ったら傘さして 傘がなければ濡れてゆく そんな人生がちょうどいい」

「暫定対策」と「恒久対策」

私が以前勤めていた大手の電機製造メーカーでは、上司が非常に仕事に対して厳しい人でした。

でも仕事を離れると会社のことは一切忘れて 飲みに連れて行ってくれて 気さくな人でした。

面倒見のいい上司で 仕事を通じて いろいろなことを教えてくれました。

 

私が製造部門にいた頃 私が管理するラインの不良品には「事故対策書」が悩みのタネでした。

不良品よりも 怪我人がでた場合の「安全対策」は厳しいものでした。
 

「暫定対策」は、比較的許してもらえるのでした。

「マニュアルを再検討して見直し、週に一度 全員を集め 再徹底する」などでいいのです。

 

問題は「恒久対策」です。ウチに帰っても そればかり考えて夜もろくに寝れませんでした。

なぜかって?

それほど厳しいのです。十分考えて提出した改善案も怒鳴られてしまうのです。

不良品(モノ)に対する「恒久対策」をもってしても あまくないのです。

例えば「品質チェック表を作成して、100枚おきにチェックさせる」なんて幼稚なことを書いたら

その場でビリッと破られます。

そして こう言います・・・

「何これ?こんなの誰もやんねぇよ!オレが作業員でも やらねぇよ!」

「やってるふりして やらねぇよ!3日も経てば誰もやらねぇよ!1週間したら ただのゴミだよ!」

こんな具合ですから 「人の安全対策」
「恒久対策」に関しては更に厳しいです。

       

ただフォローはしてくれます。

「いいか、人間って できれば やりたくないこと 面倒なことは避けたいもんなんだよ」

「だから その辺を理解して 人がたとえ手を抜いても ミスが起きないシステムを構築するんだよ」

「ヒューマンエラーをなくすシステムを作り上げるんだよ」

「でもいいか、これは人間をあてにしない 信用しない、という意味じゃないぞ」

「人間は尊重すべき存在だからな、いいな」



不思議です、十年以上も前の上司の言葉が 今でも私の頭の中に宿っています。

私の人生の糧になっています。

厳しい上司でしたが、いい上司に巡り合いました。

いろいろなことを仕事を通じて教わりましたが、それが みな人生の糧になっているのです。